「食中毒はレストランなどの飲食店で起こるもの」と思われがちですが、実は毎日食べているご家庭の食事でも発生する危険性が潜んでいます。ご家庭での発生は、症状が軽かったり、発症者が少ないことから風邪や寝冷えと間違われやすく、気づかないうちに重症化したり、死亡する例もあるため注意が必要です。
今回は、厚生労働省が提唱する食中毒予防の原則と、ご家庭で実践できる具体的なポイントをご紹介します。
食中毒予防の3原則・4原則を知って効果的に予防しましょう
食中毒は、その原因となる細菌やウイルスが食べ物に付着し、体内へ侵入することによって発生します。
- 細菌性食中毒の予防3原則: 細菌による食中毒を予防するためには、以下の3つが基本となります。
- 細菌を食品に「つけない」
- 食品に付着した細菌を「増やさない」
- 食品や調理器具に付着した細菌を「やっつける」 (加熱など)
- ウイルス性食中毒の予防4原則: ウイルスは食品中では増えないため、「増やさない」は当てはまりません。ごくわずかな汚染でも食中毒を引き起こす可能性があります。ウイルスを食品に「つけない」ことを確実にするには、調理者や調理器具、調理環境全体がウイルスに汚染されていないことが重要です。汚染されていない調理環境を作るためには、調理場内にウイルスを**「持ち込まない」、仮に持ち込んだとしても「ひろげない」**ことが大切です。 ウイルスによる食中毒を予防するためには、以下の4つが原則となります。
- ウイルスを調理場内に「持ち込まない」
- 食べ物や調理器具にウイルスを「ひろげない」
- 食べ物にウイルスを「つけない」
- 付着してしまったウイルスを加熱して「やっつける」
ご家庭で実践できる!食中毒を防ぐ6つのポイント
これらの原則を踏まえ、日々の食事作りで具体的に気をつけたいポイントを6つご紹介します。
- 食品の購入
- 表示されている消費期限などを確認して購入しましょう。
- 肉や魚などは、汁が他の食品にかからないようビニール袋などに分けて持ち帰りましょう。できれば保冷剤(氷)などと一緒に持ち帰ると安心です。
- 冷蔵や冷凍が必要な生鮮食品は、買い物の最後に選び、購入したら寄り道せず早めに帰りましょう。
- 家庭での保存
- 購入したらすぐに冷蔵庫や冷凍庫に入れましょう。
- 冷蔵庫や冷凍庫は詰め込みすぎに注意し、目安は7割程度にしましょう。冷気の流れを確保することで効率よく冷やすことができます。
- 冷蔵庫は10℃以下、冷凍庫は**-15℃以下に維持することが目安です。
- 肉や魚等はビニール袋や容器に入れ、肉汁などが他の食品にかからないように工夫しましょう。
- 下準備
- 料理を始める前や、生の肉や魚、卵を触った後など、こまめに手を洗いましょう。
- 生の肉や魚を切った包丁やまな板は、使用後すぐに洗ってから熱湯をかけることが大切です。
- 生の肉や魚の汁が、果物やサラダなど生で食べるものや、調理済みの食品にかからないよう「交差汚染」に注意しましょう。
- 冷凍食品の解凍は、冷蔵庫の中や電子レンジで行うのが安全です。
- 調理
- 調理を始める前には再度手を洗いましょう。
- 加熱して調理する食品は十分に加熱しましょう。加熱を十分に行うことで、もし食中毒菌がいたとしても殺菌することができます。特に肉類やレバーなどの内臓は、腸管出血性大腸菌やサルモネラ、E型肝炎ウイルスなどが付着している場合があるため、中心部の温度が75℃で1分間以上加熱されていることが目安です。猪や鹿などの野生鳥獣(ジビエ)は、家畜のように飼養管理されていないことから、さらに生食は危険ですので、よく加熱してください。
- 加熱調理用の二枚貝も、A型肝炎ウイルスやノロウイルスが存在するおそれがあるため、中心部まで十分に加熱が必要です。冷凍や殻付きの二枚貝は、加熱が不十分になりやすいので特に注意しましょう。
- 調理を途中でやめる場合は、食品を冷蔵庫に入れ、再び調理する時も十分に加熱しましょう。
- 食事
- 食事の前にも手を洗いましょう。
- 清潔な手で、清潔な器具を使い、清潔な食器に盛りつけましょう。
- 調理前の食品や調理後の食品は、室温に長く放置してはいけません。食卓に出したら早めに食べ切りましょう。
- 残った食品
- 残った食品を扱う前にも手を洗い、清潔な器具や皿を使って保存しましょう。
- 早く冷えるように浅い容器に小分けにして保存すると良いでしょう。
- 残った食品を温め直す時は、75℃以上で十分に加熱してください。
- 「ちょっとでも怪しい」と思ったら、食べずに思い切って捨てることが大切です。口に入れるのはやめましょう。
ご家庭での食中毒は、簡単な予防方法をきちんと守れば防ぐことができます。 もし、お腹が痛くなったり、下痢をしたり、気持ちが悪くなったりした場合は、無理をせず、医療機関へ受診しましょう。当院でもご相談を承っておりますので、ご心配なことがあればいつでもお声がけください。