「夏が終わったころから、胸のあたりが焼けるように熱い」「横になると酸っぱいものが上がってくる」「のどに何かつかえている感じがする」。9月から10月にかけて、こうした症状で消化器内科を受診される方が増えます。
その多くは「逆流性食道炎」です。この記事では、なぜ秋に増えるのか、どんな症状に気をつければよいのか、ご自宅でできる工夫と、当院での検査・治療についてお話しします。
逆流性食道炎とは
食べたものは、食道を通って胃に入ります。食道と胃のつなぎ目には、胃の中身が戻ってこないように締めつける筋肉があり、ふだんは閉じています。この筋肉がゆるんだり、胃の中の圧力が高くなったりすると、強い酸性の胃液が食道に逆流します。
胃はもともと酸に強い粘膜で守られていますが、食道はそうではありません。胃酸にさらされた食道の粘膜が炎症を起こし、ただれてしまうのが逆流性食道炎です。内視鏡で見ると粘膜に傷がなくても、同じような症状が出る「非びらん性胃食道逆流症」というタイプもあり、あわせて「胃食道逆流症(GERD)」と呼ばれます。
なぜ夏の終わりから秋に増えるのか
夏の間、冷たい飲み物や炭酸飲料、アイスクリーム、ビールなどをたくさんとった方は要注意です。
冷たいものをとり続けると、胃の働きが落ちて食べ物が胃に長くとどまり、胃の中の圧力が高まります。炭酸飲料は胃の中でガスとなって胃をふくらませ、つなぎ目の筋肉をゆるめる方向に働きます。ビールなどのアルコールや、脂っこいもの、甘いものも、同じように逆流を起こしやすくします。
さらに、夏バテで食事の時間が乱れたり、暑さで寝苦しくて寝る直前に何か食べたりする習慣も、逆流の原因になります。こうした夏の生活が積み重なり、涼しくなってきたころに症状として表に出てくるのです。
こんな症状はありませんか
代表的な症状は「胸やけ」です。みぞおちから胸にかけて、焼けるような、熱いような感じがします。食後や、横になったとき、前かがみになったときに強くなるのが特徴です。
もうひとつは「呑酸(どんさん)」と呼ばれる症状で、酸っぱいもの、苦いものがのどや口まで上がってくる感じです。朝起きたときに口の中が酸っぱい、という方も多くいらっしゃいます。
そのほか、のどの違和感や声がれ、長引く咳、げっぷが多い、胸の痛み、食べ物が胸につかえる感じ、といった症状も逆流が原因のことがあります。「風邪でもないのに咳が続く」「耳鼻科で調べても異常がない」という方が、実は逆流性食道炎だったというケースは少なくありません。
ご自宅でできる工夫
軽い症状であれば、生活の工夫で楽になることがよくあります。
食後すぐに横にならないこと。食べてから2〜3時間は、胃の中に食べ物が残っています。夕食は寝る3時間前までに済ませるのが理想です。
食べ過ぎないこと。胃がいっぱいになると圧力が上がり、逆流しやすくなります。腹八分目を心がけ、一度にたくさん食べるより回数を分けるほうが楽です。
脂っこいもの、甘いもの、お酒、炭酸飲料、コーヒー、チョコレート、香辛料の強いものは、逆流を起こしやすい食品です。すべてを禁止する必要はありませんが、症状が強いときは控えめにしましょう。
寝るときは上半身を少し高くすること。枕を高くするだけでは首が曲がるだけなので、背中から頭にかけて全体が傾くように、クッションや折りたたんだ布団を背中の下に入れるとよいでしょう。左側を下にして寝ると、胃の形の関係で逆流しにくくなるともいわれています。
おなかを締めつけないこと。ベルトやガードルで腹部を強く締めると、胃が押されて逆流しやすくなります。また、太っている方は内臓脂肪で胃が押されるため、減量が症状の改善につながります。
たばこは、つなぎ目の筋肉をゆるめ、食道の粘膜の修復も遅らせます。この機会に禁煙を考えてみてください。
当院での検査と治療
症状からある程度は判断できますが、確かめるには胃カメラ(上部消化管内視鏡検査)がいちばん確実です。食道の粘膜がどの程度ただれているか、食道と胃のつなぎ目がゆるんでいないか(食道裂孔ヘルニア)、そして胃や食道に他の病気が隠れていないかを直接確認できます。
治療の中心は、胃酸を抑えるお薬です。プロトンポンプ阻害薬や、より新しいカリウムイオン競合型酸分泌抑制薬といった薬で、多くの方は服用を始めて数日から1〜2週間で症状が楽になります。ただし、薬をやめると再発しやすい病気でもあるため、生活の工夫を並行して続けることが大切です。症状に応じて、胃の動きを良くする薬や、粘膜を守る薬を組み合わせることもあります。
放っておくとどうなるか
逆流性食道炎そのものは命にかかわる病気ではありません。しかし、長い間、食道が胃酸にさらされ続けると、食道の粘膜が胃の粘膜のように変化する「バレット食道」という状態になることがあります。バレット食道は食道がんの発生と関係があることが分かっており、定期的な内視鏡での観察が必要になります。
また、「胸やけだと思っていたら心臓の病気だった」ということもあります。胸の痛みが強い、冷や汗を伴う、運動すると痛みが出る、といった場合は、逆流ではなく狭心症など心臓の病気の可能性があるため、すぐに受診してください。
こんなときは早めに受診を
市販の胃薬を1〜2週間使っても良くならない。飲み込みにくい、食べ物がつかえる感じが続く。体重が減ってきた。黒い便が出る、または吐いたものに血が混じる。貧血を指摘された。
このような症状がある場合は、逆流性食道炎以外の病気が隠れていることがあります。自己判断で市販薬を続けず、内視鏡検査を受けることをおすすめします。
最後に
逆流性食道炎は、生活の工夫とお薬でしっかりコントロールできる病気です。「年のせい」「体質だから」とあきらめて胸やけと付き合い続けている方も多いのですが、治療をすると「こんなに楽になるとは思わなかった」とおっしゃる方がほとんどです。
食欲の秋を気持ちよく楽しむためにも、気になる症状があれば、お気軽に当院へご相談ください。

コメント