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敬老の日に「フレイル」予防

9月の第3月曜日は敬老の日です。久しぶりにご両親やおじいちゃん、おばあちゃんに会う方も多いのではないでしょうか。

そのときに、ぜひ少しだけ気にかけていただきたいことがあります。「歩くのが前より遅くなっていないか」「ペットボトルのふたを開けにくそうにしていないか」「以前より痩せていないか」。こうした小さな変化は、「フレイル」の入り口かもしれません。

この記事では、フレイルとは何か、どうやって気づけばよいのか、そして予防のために今日からできることをお伝えします。

フレイルとは「健康」と「要介護」の間の状態

フレイルは、英語の「frailty(虚弱)」から来た言葉です。年齢を重ねて心や体の活力が落ち、健康な状態と、介護が必要な状態とのちょうど中間にある段階をいいます。

大切なのは、フレイルは「まだ戻れる」状態だということです。要介護になってしまうと元の生活に戻るのは簡単ではありませんが、フレイルの段階で気づいて手を打てば、健康な状態に戻ることができます。だからこそ、早めに気づくことに意味があります。

フレイルには、筋力が落ちて体が弱る「身体的フレイル」だけでなく、気分が落ち込んだり物忘れが増えたりする「心理的フレイル」、人との付き合いが減って閉じこもりがちになる「社会的フレイル」があります。この3つはお互いに影響し合っていて、たとえば外出が減ると足腰が弱り、足腰が弱るとますます外出がおっくうになる、という悪循環に陥りやすいのです。

5つのチェック項目

フレイルかどうかを見分ける目安として、日本で広く使われているチェック項目があります。

1つ目は体重の減少で、半年で2〜3kg以上、意図せず体重が減った。2つ目は筋力の低下で、ペットボトルのふたが開けにくい、握力が弱くなった。3つ目は疲れやすさで、ここ2週間、わけもなく疲れた感じがする。4つ目は歩く速さの低下で、横断歩道を青信号のうちに渡りきれない、以前より歩くのが遅くなった。5つ目は活動量の低下で、軽い運動や体操、散歩などをしなくなった。

このうち3つ以上当てはまるとフレイル、1〜2つ当てはまると「プレフレイル」と呼ばれる予備軍と考えられます。ご本人は変化に気づきにくいものです。久しぶりに会ったご家族のほうが気づきやすいので、敬老の日はそのよい機会になります。

「口の衰え」が始まりのサインになることも

最近注目されているのが「オーラルフレイル」です。硬いものが食べにくくなった、お茶や汁物でむせることが増えた、滑舌が悪くなった、口が乾く。こうした口の衰えは、体のフレイルより先に現れることが多いといわれています。

食べにくくなると、やわらかいものばかり選ぶようになり、肉や野菜が減って栄養が偏ります。栄養が偏ると筋肉が落ち、体のフレイルへとつながります。歯や入れ歯の不具合を放っておかず、かかりつけの歯科で調整してもらうことも、立派なフレイル予防です。

予防の柱は「栄養・運動・社会参加」

フレイル予防は、特別なことをする必要はありません。3つの柱を、日々の暮らしの中で少しずつ積み上げていくことがいちばんの方法です。

栄養:たんぱく質を毎食に

年齢を重ねると「食が細くなるのは当たり前」「粗食が健康によい」と思われがちですが、高齢期にはむしろしっかり食べることが大切です。特に筋肉のもとになるたんぱく質は、若い頃よりも多めに必要になります。目安は、体重1kgあたり1日1.0〜1.2g、体重50kgの方なら1日50〜60gです。

これを1回の食事でまとめてとるのではなく、朝・昼・晩の毎食に分けてとるのがコツです。朝は卵や納豆、牛乳、昼は魚や豆腐、夜は肉、というように、毎食に「たんぱく質のおかず」をひとつ入れることを意識してみてください。カルシウムやビタミンDも、骨を丈夫に保つために欠かせません。

血圧やコレステロールを気にして肉を控えている方も多いのですが、フレイルが心配な年代では、控えすぎるほうが問題になることがあります。持病との兼ね合いは、ぜひ当院でご相談ください。

運動:無理なく、毎日少しずつ

筋肉は何歳になっても鍛えることができます。激しい運動は必要ありません。毎日の散歩、テレビを見ながらの足踏み、椅子から立ったり座ったりを繰り返すスクワットのような動きで十分です。

ポイントは「少し息が弾む程度」を「毎日続ける」こと。1日10分の散歩を週5日続けるほうが、週に1回1時間歩くよりも効果的です。歩幅を少し大きくする、階段を使う、といった日常の中の工夫も筋力の維持につながります。

膝や腰に痛みがある方は、痛みを我慢して動くと逆効果です。どの程度の運動なら大丈夫か、まずは当院にご相談ください。

社会参加:人と会うことが薬になる

フレイル予防で意外に見落とされがちなのが「人とのつながり」です。趣味の集まりや地域のサロン、ボランティア、お友達とのお茶、家族との食事。こうした機会が多い方ほどフレイルになりにくいことが、研究でも分かっています。

人と会うために身支度をし、出かけ、話をし、笑う。これらすべてが心と体の刺激になります。ひとりで運動するより、誰かと一緒に体操教室に参加するほうが続きやすいというのもよく聞くお話です。群馬県内の各市町村でも、高齢者向けの体操教室や集いの場が開かれていますので、地域包括支援センターに問い合わせてみるのもよいでしょう。

ご家族ができること

離れて暮らすご家族であれば、電話や帰省の際に「最近よく食べている?」「散歩はしている?」「誰かと会った?」と声をかけてみてください。責めるような言い方ではなく、一緒に散歩に出かける、一緒に食事をする、といった形で関わると、ご本人も受け入れやすくなります。

同居のご家族であれば、食卓にたんぱく質のおかずを一品足す、買い物に一緒に出かけて歩く機会を作る、といった小さなことが積み重なって大きな違いになります。

当院でできること

当院では、体重や筋肉量の変化、持病との兼ね合いを見ながら、その方に合った食事や運動の目安についてアドバイスしています。「最近痩せてきた」「疲れやすくなった」という変化の裏に、甲状腺の病気や貧血、心臓や肺の病気、うつ状態など、別の原因が隠れていることもありますので、まずは一度ご相談ください。

また、フレイルの方は感染症にかかったときに重症化しやすく、それをきっかけに一気に体力が落ちてしまうことがあります。インフルエンザや新型コロナのワクチン接種も、大切なフレイル予防のひとつです。

最後に

敬老の日は、長寿をお祝いする日であると同時に、「これからも元気で」と願う日でもあります。フレイルは、気づけば戻れる状態です。大切なご家族の小さな変化に気づいたときは、どうぞお気軽に当院へご相談ください。

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