新米、栗、さつまいも、秋の味覚……。つい食べすぎてしまう季節です。健診で「脂肪肝」と言われたことはありませんか。「お酒を飲まないから大丈夫」「太っていないから関係ない」と思っている方も多いのですが、脂肪肝は日本の成人のおよそ3〜4人に1人にみられる身近な病気です。
この記事では、日本消化器病学会・日本肝臓学会の資料や、肝炎情報センターの情報をもとに説明します。
- 脂肪肝とはどんな病気か
- 放っておくとどうなるか
- どうすれば改善できるか
脂肪肝とは
肝臓の細胞の5%以上に脂肪がたまった状態を「脂肪肝」といいます。
2024年、日本の学会は病名を新しくしました。お酒をあまり飲まない方の脂肪肝の多くは、今は「代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)」と呼ばれます。
MASLDは、脂肪肝に次の危険因子のうち1つ以上があるものです。
- 肥満・おなかまわりの脂肪
- 血糖が高め
- 血圧が高め
- 中性脂肪が高め
- HDL(善玉)コレステロールが低め
脂肪肝は、生活習慣病と深くつながった病気といえます。
お酒の量との関係
- MASLDとされる飲酒量は、1日あたり男性30g以下、女性20g以下です。
- これより多く飲む方は、「代謝機能障害アルコール関連肝疾患(MetALD)」や「アルコール関連肝疾患」に分けられます。
- 飲酒量が多いほど、肝硬変や肝がんに進みやすくなります。
どのくらい多い?
- 肝炎情報センターによると、健診や人間ドックを受けた方の約25%がMASLDで、潜在的な患者さんは2,000万人前後と推定されています。
- 以前の定義(NAFLD)による調査では、健診受診者の約3割にみられました。2001年の約18%から大きく増えています。
太っていなくても脂肪肝になります
- 太っていない方(BMI 25未満)にも、脂肪肝はみられます。
- 日本では、MASLDの約2割が肥満のない方と推定されています。体質(遺伝子の型)が関係するとされています。
- 「やせているから大丈夫」とは言えません。
症状がないのが怖いところ
肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれ、脂肪肝ではほとんどの方に自覚症状がありません。多くは健診の血液検査(ALT・AST・γ-GTP)や、腹部エコー検査で見つかります。
「ALT 30超え」は受診のサイン(奈良宣言2023)
日本肝臓学会は2023年に「奈良宣言」を出しました。健診でALTが30を超えていたら、まずかかりつけ医を受診しましょうという呼びかけです。ALTは肝臓の細胞が傷んでいるかを示す数値です。
ただし、ALTが正常でも脂肪肝があることもあります。生活習慣病のある方は、エコー検査で肝臓の脂肪を確認することが勧められています。
放っておくとどうなる?
1. 肝硬変・肝がんへ進むことがある
学会の患者向けガイドによると、脂肪肝の方の8〜9割はあまり進行しません。一方で、1〜2割の方は、肝臓の炎症(脂肪肝炎:MASH)から少しずつ肝臓が硬くなり(線維化)、肝硬変や肝がんになることがあります。
- 脂肪肝炎を放置すると、10年後に1〜2割が肝硬変になると報告されています。
- 肝硬変になると、年に数%の割合で肝がんが発生します。
- 脂肪肝では、肝硬変になる前に肝がんが見つかることもあります。
- 糖尿病があると、肝がんのリスクはさらに高くなります。
2. 「非ウイルス性」の肝がんが増えています
かつて肝がんの原因のほとんどは、B型・C型肝炎ウイルスでした。日本肝臓学会の「肝がん白書」によると、次のような変化が起きています。
- 2015年度に新たにみつかった肝がんの約3割(32.5%)がウイルスによらないものでした。
- この割合は、1990年代から年々増えています。
- その主な原因として、アルコールと脂肪肝が挙げられています。
3. 心筋梗塞・脳卒中にも注意
脂肪肝の方の死因で最も多いのは、実は肝臓の病気ではありません。心臓や血管の病気です。脂肪肝は、全身の動脈硬化のサインでもあります。
大切なのは「肝臓の硬さ(線維化)」
脂肪肝の方の将来に最も関係するのは、肝臓がどれだけ硬くなっているか(線維化)です。線維化の程度は、次の値から計算する「FIB-4 index」で、おおまかに見当をつけられます。
- 年齢
- AST・ALT
- 血小板の数
1.3以上の方は、さらに詳しい検査が勧められます。
脂肪肝は「治せる」病気です
脂肪肝は、生活習慣の改善でよくなることが期待できます。
体重を減らす目安
学会のガイドラインでは、次の目安が示されています。
- 体重の7%を減らすと、肝臓の炎症の改善が期待できます。
- 体重の10%を減らすと、線維化の改善も期待できます。
- たとえば体重80kgの方なら、まず5〜6kgの減量が目標です。
急な減量ではなく、半年〜1年かけてゆっくり進めましょう。太っていない方や高齢の方は、目標を個別に決めます。過度なダイエットは、かえって体に負担をかけることがあります。
食事のポイント
- 食べすぎを見直す:まず、1日の食事量(エネルギー)を適正にします。
- 甘い飲み物・果物のとりすぎに注意:清涼飲料水やジュースに多い「果糖」は、脂肪肝の進行との関連が報告されています。
- 脂の質を選ぶ:ラードやバターなど動物性の脂を控え、青魚や緑黄色野菜をとりましょう。
- 食物繊維をとる:野菜、海藻、きのこなどを増やします。
- 夜遅い食事を控える
- お酒は控えめに:少量でも、肝硬変や発がんに関係する可能性が指摘されています。脂肪肝がある方は、基本的に控えるのが望ましいとされています。
運動のポイント
- ガイドラインは、運動を強く推奨しています。体重があまり減らなくても、運動だけで肝臓の脂肪が改善するためです。
- 有酸素運動:早歩きなどを1回30分以上、週3〜4回。週150分以上が目安です。
- 筋力トレーニング:スクワットなどの筋トレでも、有酸素運動と同じように肝臓の脂肪が減ると報告されています。
肝炎ウイルス検診もお忘れなく
肝がんの予防には、B型・C型肝炎ウイルスの有無を一度調べておくことも大切です。
安中市では、40歳以上で、市の肝炎ウイルス検診を受けたことのない方が、無料で検査を受けられます。医療機関での個別検診は、令和9年1月31日までです。
当院にご相談ください
健診で次のような指摘を受けた方は、お気軽にご相談ください。
- ALTが30を超えていた
- 脂肪肝と言われた
- 中性脂肪や血糖が高いと言われた
当院の消化器内科では、次の検査で肝臓の状態を確認します。
- 血液検査
- 腹部エコー
- FIB-4 indexなどによる線維化の評価
そのうえで、生活習慣の改善を一緒に考えます。
参考にした公式情報
- 日本消化器病学会・日本肝臓学会「脂肪性肝疾患の日本語病名について」(2024年8月) https://www.jsge.or.jp/news/20240820-3/
- 日本消化器病学会・日本肝臓学会「MASLD等の日本における診断基準について」(2026年2月) https://www.jsge.or.jp/news/20260202/
- 日本消化器病学会・日本肝臓学会『NAFLD/NASH診療ガイドライン2020(改訂第2版)』 https://www.jsge.or.jp/committees/guideline/guideline/pdf/nafldnash2020_2_re.pdf
- 日本消化器病学会・日本肝臓学会『患者さんとご家族のためのNAFLD/NASHガイド2023』 https://www.jsge.or.jp/committees/guideline/disease/pdf/nafld_2023.pdf
- 肝炎情報センター「脂肪性肝疾患」(2026年6月改訂) https://www.kanen.jihs.go.jp/sick/kinds/shibousei.html
- 肝炎情報センター「肝がん」 https://www.kanen.jihs.go.jp/sick/kinds/kangan.html
- 日本肝臓学会「奈良宣言2023」 https://www.jsh.or.jp/medical/nara_sengen/ippan.html
- 日本肝臓学会『肝がん白書 令和4年度』 https://www.jsh.or.jp/lib/files/medical/guidelines/jsh_guidlines/liver_cancer_2022.pdf
- 厚生労働省 e-ヘルスネット「脂肪肝」 https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/dictionary/metabolic/ym-033.html
- 国立がん研究センター がん情報サービス「肝細胞がん」 https://ganjoho.jp/public/cancer/liver/about.html
- 安中市「令和8年度 がん検診等一覧」 https://www.city.annaka.lg.jp/page/1864.html

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