秋は稲刈りや畑仕事、きのこ狩り、紅葉狩りなど、野山や田畑に入る機会が増える季節です。この時期に気をつけたいのが、ダニが運ぶ感染症です。この記事では、群馬県でも毎年患者が出ている「ツツガムシ病」と、全国で増えているマダニの感染症(SFTS)について説明します。
ツツガムシ病とは
ダニの一種「ツツガムシ」の幼虫に刺されて、病原体(リケッチア)に感染して起こる病気です。
- ツツガムシの幼虫は、一生に一度だけ動物に吸い付き、1〜2日ほど吸着します。
- 北海道を除く全国で発生し、毎年300〜500人ほどが届け出られています。
- 患者さんは60代以上が多くなっています。
群馬県では秋から初冬に多い
- 群馬県によると、県内では例年10〜12月に多く発生しています。
- 感染した場所は主に北毛地域ですが、西毛地域からの報告もあります。
- 県内の届出数は、近年は年7〜16人です(2020〜2025年)。
どんな症状?
刺されてから5〜14日後に、次のような症状が出ます。
- だるさ、食欲不振、頭痛、寒気を伴う発熱(数日で40℃近くに達することがあります)
- 刺し口:黒いかさぶたのような跡。皮膚のやわらかい、服に隠れた見えにくい場所に多くみられます。
- 発疹:発熱から3〜4日目ごろ、顔や体に赤い発疹が出ます。
- 刺し口の近くのリンパ節が腫れることもあります。
発熱・刺し口・発疹は、それぞれ患者さんの8〜9割にみられます。
早く治療すればよく効く病気です
- ツツガムシ病には、テトラサイクリン系の抗菌薬がよく効きます。適切に治療すれば、劇的に良くなります。
- 一方で、よく使われるペニシリン系・セフェム系(βラクタム系)の抗菌薬は効きません。
- 治療が遅れると、肺炎や脳炎、血液が固まりにくくなる重い状態(DIC)を起こし、命に関わることもあります。
「野山や田畑に入ったこと」は、診断の大切な手がかりです。発熱で受診するときは、必ずお伝えください。
マダニが運ぶ「SFTS」も全国で増加
SFTS(重症熱性血小板減少症候群)は、マダニに咬まれて感染するウイルスの病気です。
- 発熱、吐き気・下痢などのおなかの症状が出ます。
- 国内の患者さんのうち、およそ4人に1人が亡くなっています(致死率27%)。
- 2025年に発病した方は192人で、過去最多でした。
- 2025年には、関東地方(神奈川県・茨城県)で感染したとみられる患者さんが初めて報告されました。
群馬県内では、これまで患者さんの発生は確認されていません。ただし、県内でもSFTSウイルスを持つマダニが見つかっているため、注意が必要です。
SFTSは、体調の悪い犬や猫から、咬まれたり体液に触れたりしてうつった例もあります。弱っているペットや野良猫の世話をするときは、素手で触れないよう気をつけましょう。
予防のポイント
ツツガムシ病にもSFTSにもワクチンはありません。刺されない・咬まれないことがいちばんの予防です。
野山・田畑に入るとき
- 服装:長袖・長ズボン、手袋、帽子を身につけ、首にタオルを巻きます。
- すき間をふさぐ:シャツの裾はズボンの中へ、ズボンの裾は靴下や長靴の中へ入れます。
- 服の色:明るい色の服だと、ダニが付いたときに見つけやすくなります。
- 草の上:直接座ったり寝ころんだりしないようにします。
- 虫よけ剤:「マダニの忌避」の効能がある、ディートやイカリジンを主成分とする製品が補助的に役立ちます。用法・用量を守り、ディート30%の製品は12歳未満には使えません。
帰ったら
- すぐに入浴して体を洗い流します。
- 刺されていないか確認します。首、耳の後ろ、わきの下、足の付け根、手首、膝の裏は特によく見ましょう。
- 服に付いたダニは、ガムテープなどで取り除きます。
マダニに咬まれていたら
- マダニは数日から長いと10日以上、皮膚に吸い付いたままになります。
- 無理に引き抜かないでください。口の部分が皮膚に残って化膿したり、ダニの体液が体に入ったりするおそれがあります。
- 医療機関(皮膚科など)で取り除いてもらいましょう。
- 咬まれた後は数週間、体調の変化に注意し、発熱などがあれば受診して、マダニに咬まれたことを伝えてください。
こんなときは早めに受診を
山林・田畑・川原に入ってから1〜2週間以内に、次のような症状が出たときは早めに受診してください。
- 発熱
- 体の発疹
- 黒いかさぶたのような傷
受診の際は、いつ・どこで野外に出たかを医師にお伝えください。当院では内科・皮膚科で診察します。
参考にした公式情報
- 厚生労働省「つつが虫病」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000173061.html
- 国立健康危機管理研究機構(JIHS)「つつが虫病」 https://id-info.jihs.go.jp/infectious-diseases/tsutsugamushi-disease/index.html
- JIHS「つつが虫病(詳細版)」 https://id-info.jihs.go.jp/infectious-diseases/tsutsugamushi-disease/detail/index.html
- 病原微生物検出情報(IASR)43(8) 2022 つつが虫病特集 https://id-info.jihs.go.jp/niid/ja/tsutsugamushi-m/tsutsugamushi-iasrtpc/11415-510t.html
- 群馬県「つつが虫病について」 https://www.pref.gunma.jp/page/3314.html
- 群馬県「全数把握感染症一覧」 https://www.pref.gunma.jp/page/3303.html
- 群馬県「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」 https://www.pref.gunma.jp/page/3329.html
- 厚生労働省「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)に関するQ&A」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou19/sfts_qa.html
- JIHS「SFTS 届出状況(2026年7月31日現在)」 https://id-info.jihs.go.jp/surveillance/idss/target-diseases/sfts/201303-202501/20260731_SFTS.pdf
- JIHS「SFTS リスク評価(2025年9月18日改訂)」 https://id-info.jihs.go.jp/risk-assessment/severe-fever-with-thrombocytopenia-syndrome/20240801/250918_JIHS-NIID_SFTS_v2.pdf
- 厚生労働省「ダニ媒介感染症」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000164495.html
- JIHS「マダニ対策、今できること」 https://id-info.jihs.go.jp/diseases/ta/tick-borne-diseases/tick-prevention/index.html

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